ワインの歴史上、何かと悪者扱いされてきたオークチップ。オーク樽同様にワインに対して風味をつけることができますが、樽を使用した場合とはどんな風に違うのでしょうか?
【更新情報】
2018年8月24日公開。
2019年1月18日更新。
ワインヌ先生
オーク樽(※)由来のバニラとかココナッツの香りって好き?
※ 一般的に200リットル~300リットルの小樽のこと。フレンチオークが1樽約10万円、アメリカンオークが1樽約4万円。

 

 

まーくん
超好きです!
ワインヌ先生
だよなー俺もかなり好き

オークチップという存在

ワインヌ先生
ワインを樽で熟成した際、オークラクトンやヴァニリンといった甘い香りがワインに付加される。しかし、この樽っていうのが結構高くて、新しいフレンチオーク樽の場合はワイン1本あたり260円を超えてしまうという難点がある(※)
※古樽の場合はもっと安くなります。1年間使用で価格の70%、2年で50%、5年で10%程度の値段になります。つまり5年使用したフレンチオークだと約1万円。ワイン1本あたり26円程度。

 

 

まーくん
え、高い! 
ワインヌ先生
だから、1000円くらいのワインだと大抵の場合、樽ではなくオークチップが使用されている
まーくん
チップ?
ワインヌ先生
オーク樽の元となる木材を削り取ったチップのことで、これを袋につめてワインにしばらく泳がせると樽香がつくんだな。1990年前半から世界中で使用されている
まーくん
へえええ! てことは、そっちのほうが安上がりですよね?
ワインヌ先生
そのとおり。1本あたりのコストは、何と約5円
まーくん
高いワインもチップを使用しちゃえば、もっと他のところにコストかけられるんじゃないですか?
ワインヌ先生
それが、フランスAOCワインの場合は2006年から禁止されていて(※)、それ以前もヨーロッパ圏ではかなり悪評高い存在だった。禁止された理由も「AOCワインのイメージを損なう」「ワインとテロワールの関係がわかりづらくなるから」というものだったもよう
※ その下のIGPワインには認められています。
まーくん
なんという……
ワインヌ先生
他にも木材の板や角を、そのままワインに浸して香りをつける方法もある(※)
※ オークスティーブというものです。

オークチップ使用ワインと樽使用ワインの違い

ワインヌ先生
かつては、オークチップ使用ワインは妙に樽香が強くて色調も樽を使ったにしては鮮やかさが足りず、不自然なものだと言われていた
ワインヌ先生
しかし近年、オークチップ製造の技術が非常にあがり、さらにマイクロ・オキシジネーション(MO)(※)という、極微量の酸素を醸造中の果汁に入れていく技術と組み合わされて細心の注意を払い製造されたものについては、ちょっとやそっとじゃ違いがわからなくなったそうな
※ 1990年、フランス南西部のマディランでパトリック・ドゥクルノーがタンニンの多いタナで造ったワインをまろやかにするために考案した技術。現在では多くの生産者が取り入れており、特にボルドーでは新酒であるプリムールを試飲させるためにMOが採用されています。
まーくん
まじですか、じゃあ何のために樽を使うんでしょうか……
ワインヌ先生
樽は香り付けのためだけじゃなく、使用することによって清澄作用が働くので、オークチップを使用したものとは色調や味わいが違ってくる。つまり、ステンレスタンク+オークチップ使用の場合は、「樽にしてはあんまりバランスよく清澄されてないような?」という味がする。ステンレスタンク+オークチップ+MOでやっておいて、後でがっつりマイクロフィルターにかけると、人によってはわざとらしく感じる場合も。生産者によっては、香り付けよりは清澄を目的として樽を使う場合もあるんだな
まーくん
なるほど~

日本では、オークチップ使っていいの?

ワインヌ先生
さて我が国日本のワインについてだが、2018年4月からオークチップを使用した場合でも果実酒のカテゴリになるよう変わった。これまでは甘味果実酒にカテゴライズされてた
まーくん
と、いいますと?
ワインヌ先生
つまりこれは税法上のカテゴリなので、1キロリットルあたり12万円だった税額が8万円となり、消費者も手を伸ばしすくなったってことだな
まーくん
!!!
ワインヌ先生
そういう事情から生産者も造りやすくなったので、今後オークチップを使用された日本ワインが増えるんじゃないだろうか
まーくん
楽しみです!

<参考>堀賢一『ワインの個性』SBクリエイティブ